こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。
今年度から小児科でも公費で1ヵ月健診が出来るようになり、当院でもちょいちょい来られています。とはいえ、だいたい限られた産院で生まれた子ばかりですね。ほとんどが従来通り、お母さんの産後健診と一緒に産科で健診をされているようですけど。そこで今回は乳児期早期の健診の重要性について書こうと思います。
小児科と他の科の最も大きな違い
小児科の大きな特徴の一つとして、めちゃくちゃ多くの病気を知っている必要があることです。それは小児科が、内科外科のように臓器別に分かれてないというだけでなく、非常に多くの先天性の疾患が含まれるので、そこでものすごく知っておかなきゃいけない病気の種類が増えるのです。ちなみに私は小児神経専門医ですが専門医試験受験のときに1000以上の疾患を覚える必要があると言われました。生まれつきの疾患は当然小児科の段階で診断され、成人科の年齢にたどり着くまでに小児科が対応するし、成人してもそのまま小児科医が診ていくことも多々あります。ですから、小児科医の中では有名な疾患でも、他科の先生にとっては学生の時に聞いたことがあったかもくらいなのがほとんどだったりします。そして、乳児期早期、つまり赤ちゃんであるほど、健診のときは非常に多くの疾患を可能性を想定して診る必要があります。
早い段階で確認して対策すべきこと
以前から何度もブログなどで述べていますが、乳児湿疹とか体重増加不良とか出べそとか、最近では頭の形が歪んでるとか、家族がまだあんまり気にしてない(今後進行すると家族も気にするだろう)ことでも、早めに対策すると治療や予防が上手く行くことがあります。湿疹などはひどくなってからでも治療出来るけど、強いステロイドを長期に使うことになったり、すでに食物アレルギーの前段階に入っていたり(皮膚感作といいます)、これをもっと軽い段階で治療に入れたらすぐに治ったのにと思うことは多々あります。体重増加不良は母乳のトラブルのこともあるし便秘が原因のこともありますけど、対策が遅れるほど赤ちゃんにとっては栄養不良状態が続いていることになり脳を含めた様々な発達に影響します。出べそは圧迫治療するなら早いほうが良いですし、歪んだ頭の形は早めに向き癖対策をすれば修正されるものを、放置して進行した結果、30~40万円かけて46時中ヘルメットをかぶる治療をしないといけなくなるかもしれません。
早い段階で絶対見逃してはいけない病気が増えてる
絶対に見逃してはいけない病気は医学の進歩によってみるみる増えてきました。医学の進歩によって見つかりやすくなったということではありません。早い段階で発見できれば治療出来る病気が増えたということ、逆にいえば見逃せば治療機会を逃して、命を救えないか、障害を残す病気が増えたということです。数十年前なら心臓にしても神経筋肉にしても代謝にしても、多くの先天性疾患は治療がないので発見の段階がそれほど重要ではありませんでした。わかったとて治療出来ないんですから。ですが、最近は外科治療だけでなく、酵素補充治療、遺伝子治療など次々と開発されて、早い段階で見つけていれば治療により完治、または全く障害の無い人生を送れていたのにという病気が年々増えてきています。
医学が進歩しても診察は進歩しない
医学の進歩により、治療とともに検査技術も発展して、これまですぐに診断出来なかった病気が診断出来るようになっていますが、それは診察により病気を疑わないと検査につながりませんし診断もされません。健診現場などで医師が子どもを診察する段階は何十年も前から何も変わっていないのです。日々進歩する治療検査技術を活かすためには、医師の知識と診察する目にかかっているわけで、見逃しが子どもの将来を大きく左右するリスクが増えることで、健診医の責任は年々大きくなっていってると感じます。そしてそれは乳児期早期の健診において最大級になるといえます。
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