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子どものワクチンに反対する家族を説得するには

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

お母さんが子どもにワクチンを接種したいと思っていても、お父さんがワクチン反対派だったり(その逆も)、おじいちゃんやおばあちゃんなどの親戚が強く反対していたりで、ワクチン接種が出来ないままになっているお子さんが時々おられます。コロナやインフルエンザなどのご自分のワクチンなら感染して苦しむのはご自身なのでご勝手にといったところですが、子どものワクチン接種は彼らの人生を左右する問題なので、なるべく早く何とかしたいところです。

そこで今回は反ワクチン派をどう説得するかについてです。現在、一般的な定期接種化されてるワクチンは効果と安全性が科学的に十分証明されており、接種しないという選択肢は出てこないはずのものです。しかし、反ワクチン派の人々はこれまでの人生のどこかで間違った情報に触れたり、特殊な思想を持つ人との出会いや、強いショックを与えるイベントなどにより、ワクチン全体または一部に強い拒否感を抱くようになります。最近になってワクチンについて調べてアンチになった人ならまだ深刻ではないですが、人によっては信念、アイデンティティまでになっていて、説得は一筋縄ではないです。

リー・マッキンタイアという哲学者は「エビデンスを嫌う人たち」という著書の中で、こういう反ワクチンのような科学否定論者の考えの傾向として、以下の5つを挙げています。
①証拠のチェリーピッキング
→自分たちの都合の良い証拠しか見ないこと。例えばワクチン後遺症の報告や効果が否定された報告だけに注目し、それよりはるかに多い、効果と安全性を証明する研究報告を無視する傾向
②陰謀論への傾倒
→ワクチン接種を勧められるのは国が製薬会社や医者に利益を誘導しているといった、あまりにも非現実的な陰謀論を信じやすい
③偽物の専門家への依存
→〇〇大学名誉教授とか、△△ワクチン研究所所長とか、我々からしたら誰やねん的な人の言説を信じてしまう。本当の専門家を見極めるのが難しい傾向。
④非論理的な推論
→〇〇ワクチンで不妊になるなど。ワクチンの何がどう作用したら不妊に行きつくのか機序も病態も説明がつかない突拍子もない推論でも信じる
⑤科学への現実離れした期待
→ワクチン接種の効果にも安全性にも100%というものはないし科学とはそういうものです。それでも接種しないよりは天文学的に低いリスクなのだから接種が勧められるのに、1例の例外でもあれば、それを信じられないと考える傾向。

 

これらの傾向から形成された強い信念やアイデンティティを持つ人に、考えを見直させるために説得するときの心がけとして、マッキンタイア氏は著書の中で、
・感情を交えない
・攻撃しない
・丁寧に耳を傾ける
・常に敬意を示す
以上を勧めています。頭ごなしに「何をバカなことを言ってるんだ!お前の考えを間違っている!目を覚ませ!」と言ったところで、反ワクチンの考えを余計に増強させてしまいます(これをバックドラフト現象と呼ぶそうです)。穏やかに話して相手の意見も聞き、信頼関係を壊さないように、上記の5つの誤った傾向を正しながら粘り強く科学的根拠を伝えていくことが重要ということです。そして、最も大切なのは諦めないで説得を続けること。

家族内の反ワクチン派のために、大切な子どもに接種を出来ずに困っているなら、上記を心がけて、ぜひ粘り強く説得を続けて欲しいです。私としては立場や環境上、反ワクチンの保護者の方と接触するのは自院の外来か健診の場に限られていますが、可能な限りワクチンを勧めるのを続けていきます。

 

参考文献:リー・マッキンタイア著(西尾義人訳).「エビデンスを嫌う人たち」. 国書刊行会, 2024