· 

全人類に知っておいて欲しい「てんかん」のこと

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

てんかん診療の前線(とまで言うのもおこがましいが)から離れて10年以上経つので、今さらこういう話するのもちょっと気が引けますが、最近いろいろありまして、このブログを読んでくれている、てんかんとは関係ない生活を送っている方々にも届けたく書くことにしました。

てんかんは100人に1人が罹患する少なく無い病気です。いつ身近なものになるかも分かりません。関係なくても、最低限知っておいて欲しいことを書きました。

★最低限知ってて欲しいこと(最大限簡略化しました)
・てんかんは、いきなり全身けいれんや意識消失などの発作を起こす脳の病気です。
・一口にてんかんと言っても、たくさんの種類があります。
・種類によっては絶対に睡眠中にしか発作が起きないものも多くあります。意識を失わないものもあります。
・毎日のように発作があり、多数の薬を使ったり手術をしても止められないてんかんもあります。
・しかし、小児期に発症するてんかんの7割は良性で、薬を飲んでいれば発作は起きなくなります。
・ただし良性のてんかんでも、すぐに薬を止めると発作が起きます。
・ですから、通常は発作が消失しても薬を続けます。この期間もてんかんの種類により異なり、2年程度からほぼ生涯必要な人と様々です。
・発作が無くても薬を続けている以上、てんかんという病名は外せないので、長期に薬が必要な人にとっては、てんかんはスティグマ(烙印)となり、生涯ついて回ることになります。

★多くの誤解
・てんかんの診断がついて治療を続けている以上、全てのてんかん患者に日常生活で発作を起こすリスクがある。
→「全ての」というのが間違い。良性のてんかんであれば、未発症の人に初めててんかん発作が発生するのと同等の低リスク。前述したように小児期発症のてんかんの7割が良性。
・全てのてんかんには遺伝性がある。
→これも「全て」というのが間違い。種類によるというのと、多くの遺伝性を持つてんかんは良性で発症しても普通の生活が出来ます。

 

この誤解という言葉は生やさしいですが、偏見と言い換えることも出来ます。特に1つ目の偏見で、スイミングスクールはダメ、運動部もダメ、自転車もダメ、海水浴もダメ、飛行機乗るのもダメ、車の運転もダメ、刃物を持つ職業(理美容師、看護師、医師など)もダメ、ダメ、ダメ、と言われます。「万が一、発作が起きて事故になったら、本人も周囲も不幸になるでしょ!誰が責任取るのよ!」ともっともらしい理由をつけて。現在は資格や職業上のことは、法律により個々の病状により判断されるように改正されるようになりましたが、それも大きく変わったのはほんの20年ちょっと前からです。社会の中ではまだまだこれらの偏見により、患者さんたちは不利益を被っています。しかも悲しいのは、患者さん本人たちがそれに慣れてしまい受け入れてしまっていることです。

 

2つ目の偏見でも、てんかんの人と結婚して子どもが出来たら、その子もてんかんになるかもという理由で破談になることは今でもあるようです。絶対に遺伝しないタイプのてんかんであっても。私は出来るだけ、患者さんに結婚を考えるパートナーが出来たら直接病気の説明をするようにしています。

 

てんかんはかつては薬も少なく、発作を止められない患者さんも多かったのもあり、精神疾患の一つとしてひどい人権侵害をされてきた歴史がありました。それを多くの患者本人、家族、医師たちの努力により解決してきました。しかし、今も根絶されたとはいい難く、これからも私たちはその努力を継承していかなければいけないと思っております。