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外来で点滴なんていつの話?

おはようございます。ひさしぶりに朝に書いてます。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

嘔吐や下痢を症状とする胃腸炎も流行とまでは言えずですが、コンスタントに見受けられます。今回はこの治療について。

 

多くの場合でその原因となる胃腸炎はウイルス性(ノロやロタも含めて)で特に治療薬はありません。自然に治るのを待つだけです。実はサルモネラ、カンピロバクター、O157といった病原性大腸炎など食中毒でよく聞くような細菌性と言われる腸炎ですら、軽度の時に抗菌薬を入れるとかえって悪化させるので、無治療経過観察で治るのを待ちます。ただ、治るのを待つだけといって頻回の嘔吐や下痢を放置して、水分も摂れない状態を続けると脱水になって死んでしまいます。ですので、胃腸炎の治療はいかに嘔吐下痢(主に嘔吐)を減らして水分をとり、脱水にならないようにして治るまでの時間を稼ぐかということが焦点になります。

 

ちなみにに下痢だけで脱水になるのは滅多にありません。1時間に10回以上ならいざ知らず、1日10回程度の下痢だけで嘔吐なく水分を摂れていたらまず致命的な脱水にはなりません。脱水を警戒するのは下痢の有無に関わらず、嘔吐が頻回なときです。

嘔吐してでも水分を摂らせた方が良いんですよね?と、ひたすら飲んでは吐き、飲んでは吐きを繰り返させていた方がいて絶句したことがありました。飲んでも嘔吐してたら実質水分は入らないし、胃酸が消失して電解質の異常も出てきて危険です。嘔吐しないように工夫しながら、水分を摂ることが重要です。

嘔吐しているときに下痢も伴うと、さらに脱水が進むのでは無いかと心配されるかもしれませんが、私たちにとって嘔吐してる時に下痢でも便が出てることは大きな安心材料です。なぜなら、腸が動いていることを意味してるからです。最も怖いのは腸が全く動かない状態(イレウスと言われます)で、こうなると嘔吐を止めるのが難しくなります。酷いと胃の先の十二指腸からの逆流を示す胆汁嘔吐(緑色の嘔吐です)が出てくるので、こうなると諦めて入院での治療となることが多いです。

治療ですが、私が研修医の頃は外来で嘔吐頻回の子に2時間くらいの外来点滴をしていたものですが、現在はほぼ必要無いというのが小児科一般的な考え方です。後で詳述する経口補水療法、つまり口から水分を摂ることで治す治療でほとんど対応出来るのです。中等度までの脱水に対する経口補水治療は海外の途上国で医療資源が乏しい中で、コレラなどの胃腸炎から子どもたちを治療するために行われるようになったものです。彼らの国では、日本みたいに半日嘔吐が続いたくらいで点滴なんてやってられないってわけですね。子どもにとってもただでさえ嘔吐でしんどい時に、複数の大人に羽交い締めにされて、時に何度も針を刺されて、それでコップ1〜2杯の水分を入れれるだけなので、恐怖とストレスに対するメリットは随分少ないんですよね。

 

で、少し細かく説明しますと、聞いたことあると思いますがOS1®に代表される市販の経口補水液を使います。少ししょっぱいので飲みにくければアクアライト®でも良いですが、成分的にはOS1の方が良いです。ポカリやアクエリは成分が全く違うので代わりにはなりません(塩分が少な過ぎて糖が濃すぎる)。経口補水液1〜5mlをスプーンやペットボトルの蓋(すり切り一杯7.5mlです)などを使って、まず5分間隔で飲ませます。少しずつ飲ませてと言われて50mlとかいきなり飲ませる方がいます、仕方ないですね、具体的に言わない医者が悪いです。特にコップで一口ずつ飲ませようとすると、口渇があると一気に子どもは飲んで吐いてしまうので注意しましょう。

 

上手く行きそうなら、1回量を5⇒10⇒15と増やしていけばよいですし、慎重に行くなら1時間は5分毎に5mlずつ続けて(これで60ml)、次の1時間は5分毎に10mlずつにしても、2時間でトータル180ml入ります。外来点滴では200mlを2~3時間で入れるので、慎重にやってもほぼ同等の成果ですね。途中で嘔吐があれば15~30分休ませて、1回量を減らして再開すれば良いです。

 

当院では嘔吐頻回で受診された際、症状に応じた制吐剤を坐薬で入れて、この経口補水療法の導入を待合室で看護師がサポートしながら行います。外来点滴と違って子どもに恐怖を味合わせることなく、帰宅後にも継続出来て、今後の同様の症状時にも活用出来ますね。

 

なお、最後に注意点として、そもそも飲めない(嚥下をしない)くらいぐったりしてる、血便や緑色嘔吐、強い腹痛(啼泣)を伴うときは、緊急疾患のことがあるので、夜間休日でも救急外来を受診するようにしてください。