こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。
今夏も手足口病をしばしば見かけるのですが、今シーズンの手足口病の皮疹は手のひらや足の裏に赤々とした水疱は少なく、体幹四肢にも広く拡がる1mmくらいの発赤疹が多く、とてもわかりにくいですね。流行する手足口病はインフルエンザと同様にシーズン毎に傾向があって、今年は見ようによっては溶連菌や、時に水痘の可能性も考えてしまうような診断が難しい皮疹になっています。今回はこの手足口病に代表されるようなウイルス感染による皮疹の話です。
ウイルス性皮疹は保護者も小児科医も惑わす
ウイルス性皮疹とは名前の通りウイルスが原因の皮疹で、有名どころでは麻疹風疹水痘、手足口病などもすべて原因はウイルスなのでウイルス性皮疹の一種です(溶連菌だけは細菌感染が原因です)。こういった有名なウイルスではない、無名で熱などの風邪症状を出さないようなウイルスでも皮疹だけ出ることがあります。基本的に自然に治るものがほとんどですが、時に急に派手な皮疹で出てくるので保護者も小児科医もびっくりさせられます。
食物アレルギーとの区別は出来ます
発熱に伴って出現する皮疹であれば、おそらく熱に関連したものであろうと考えられます。しかし、何の症状もなくいきなり皮疹だけで出てくると何事かと思うわけで、患者さんで多いのは食物アレルギーではないかと心配され受診されますが、食物アレルギーの皮疹とは性状と経過から簡単に区別出来ます。保護者は仕方がないとしても、ときどき知識の乏しい保育園の看護師で、アレルギーかもしれないから病院で検査してもらうよう保護者に指示する人がいて閉口します。
アトピー性皮膚炎・乳児湿疹の悪化かの判断が難しい
タイトルにあるようなアトピー性皮膚炎や乳児湿疹治療者で湿疹悪化時にステロイドの追加塗布を指示されていると、このウイルス性皮疹が、治療中の湿疹の悪化によるものと思いステロイドを塗ってしまいます。でも、ウイルス性なのでステロイド剤はほとんど効きません(多少発赤や痒みが良くなるかもですが)。それに本来自然に消えるものなので、結果的にステロイドの過剰投与になってしまいます。
ウイルス性皮疹の見分け方
ということで、医者でも難しいことが多いんですけど、特徴をあげておきます。
①急に一斉に出現する(湿疹治療中でも順調に経過していたところに)
②体幹、四肢など広範囲にみられる(首回り、肘、膝、手首足首などに限局するのでなく)
③比較的痒みは少ない
④ステロイドの塗り薬が効かない
といったところでしょうか。一番覚えておいて欲しいのは④です。指示されてるステロイド外用を2~3日続けても変わらないなら、それ以上続けないで受診しましょう。あちこちで繰り返し書いていますが、ステロイドが効かない皮疹は、このウイルス性以外にもとびひ(細菌)やカビなどの感染によることもあり、ウイルスなら良いですが、ステロイドはとびひやカビの病変を悪化させるのでくれぐれも注意してください。
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