こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。
胃腸炎の流行がまだまだ続いていますね。胃腸炎ってあんまり高熱出ないですけど最近のは結構熱が上がったり、嘔吐から始まるというのは典型ですが、わりとすぐに下痢に移行して治っていくという特徴がありそうです。ていうか、うちの近所だけかもしれませんが。
ナウゼリン®は実際どれくらい効くのか
胃腸炎で見られる嘔吐に対して、よくナウゼリン®(ドンペリドン)が内服だったり坐薬だったりで処方されます。これそんなにも効きません。例えば高熱に対してアセトアミノフェンを使うと30分もせずにみるみる解熱するといったような効果は期待出来ません。ときどき、1回嘔吐するたびにナウゼリン®坐薬を子どもに入れる方がいますが、残念ながらその程度の嘔吐がすっぱり止まるほどの効き方はしません。使い方としては、何も口にしてないのに胃液ばかりを連続して嘔吐するくらいに、ワンチャンちょっとでも効けば良いのになくらいで使うイメージです。先生によっては異論があるかもしれませんが、私の中での位置付けです。
五苓散はどうなのか
では、旧ブログでも再三とりあげた漢方薬である五苓散はどうかというと、効くときは劇的に効きます。ただし、本人の状態とかみ合ったときだけです。どういう状態かというと、いろいろありますが代表的なのは、嘔吐しながらも飲みたがる状態(口渇を伴う嘔吐)です。この状況、よく見かけますよね。このタイミングであればナウゼリン®よりも断然効きます。内服するときは漢方なのにお湯ではなく冷水で飲むのが良いと言われます。氷水くらいが良いという人もいますが、やったことが無いのでそれは本当かわかりません。ちなみに当院では特注の五苓散坐薬を院内で挿れています、無理やり口から飲ませるよりずいぶん楽です。五苓散の良いところは、漢方を使う時に悩む体質との相性というのが無いところで、これをミスると薬でかえって悪化させることがありますが、五苓散は万が一間違ったタイミングで投与しても悪化させることがないので、患者さんたちがドラッグストアで売ってる五苓散を適当に飲んでも安全なのです。
やっぱり最後は経口補水療法が大切
でも、ナウゼリン®にしろ五苓散にしろ、胃腸炎真っただ中に好きなだけすぐに飲めるようになるほどではありません。最も重要で効果的なのはやっぱり経口補水療法です。OS1®のような経口補水液を出来るだけ吐かないように少量ずつ、水分と必要な糖分や電解質も摂取して、なるべく嘔吐しないように時間を稼いで胃腸炎ウイルスに勝つという治療です。これが胃腸炎での嘔吐の対応の主役です。以前、水分が必要と思って、子どもがどれだけ吐いても好きなだけ飲ませ続けていたお母さんがおられましたが、これでは吐いてる水分の方が多くなり脱水になってしまいますし、吐けば吐くほど吐きやすくなるので、禁じ手です。注意しましょう。
コメントをお書きください
母1 (木曜日, 26 6月 2025 12:32)
五苓散が良いとは初めて聞きました!
我が子はまさに、喉が渇くタイプの胃腸炎の時に、少しづつ水分摂取していたら、数時間後一気に吐いてしまい、脱水になった事があります。
なので、水分摂取はいつも出来るだけ遅らせるようにしていました。
これからは五苓散をお守り代わりにしたいと思います!
吉岡 誠一郎 (木曜日, 26 6月 2025 15:34)
コメントありがとうございます。
五苓散は頭痛、めまい、二日酔い、乗り物酔いなんかにも良いので、自宅に常備しておくと良いと思います。
嘔吐に悩む母 (土曜日, 28 6月 2025 21:03)
五苓散、一度子どもの胃腸炎で吉岡先生に挿れていただいたことがあり、すぐ効いた印象があります。
少量でも吐いてしまう、元気がないパターンを何度か我が子で経験していますが、先生が点滴治療が必要と判断するのはどういうポイントですか??
吉岡 誠一郎 (日曜日, 29 6月 2025 02:02)
コメントありがとうございます。
ワクチンによってロタウイルスによる重症胃腸炎がいなくなったのもあり、点滴や入院が必要な嘔吐を伴う胃腸炎はほとんど見なくなりました。胆汁を吐くほどのひどい嘔吐や食中毒のような細菌による胃腸炎は入院点滴が必要なことがあります。しかし、外来点滴だけで治るような嘔吐なら経口補水療法でも治せると考えており、コップ1杯程度の水分を投与するために、泣きわめく子どもを羽交い絞めにして、時に何度も針を刺される恐怖を経験させてまで点滴するのはナンセンスと考えています。
嘔吐に悩む母 (日曜日, 29 6月 2025 09:57)
なるほど!どういった基準で入院点滴が必要だと判断されてるのか気になったのでスッキリしました。
我が子は水分も摂れないし、嘔吐は続くし、でもかかりつけ医(他院)は制吐剤と整腸剤しかもらえず、親としてはどうしたもんか、と悩む時がありました。結局は嘔吐し低血糖、脱水になりケトン性嘔吐症で他院で外来点滴をしてもらい回復しました。血糖値は見た目では判断しずらいし、今後も気をつけなければなぁと思っています。