こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。
外来でよく話が通じなくなってしまうことの一つに、けいれん関係の用語の混乱があります。下手すると医者レベルでもわかってない方もいるようで、そういう方が救急外来などで説明されてると、患者さんが混乱するのも止む得ないですね。
まず、けいれんとは?
身体がガクガクすることです。以上。といって終わらせるのは乱暴なので、専門的には体が硬くなってガクガクといよりプルプルに近いのを「強直」と言ったり、律動的に筋が収縮弛緩する結果ガクンガクンと体が動くのを「間代(かんたい)」と言ったり、その他に本人の意に反して不規則にガクガク、ブルブル動いたりするのを「不随意運動」と言ったりします。一方で、体の力が抜けてぼーっとしてる状態はけいれんとは言いません、動きがありませんから。
発熱時のけいれんとは?
発熱した際にけいれんすることです。以上。これはさすがにこれだけです。
熱性けいれんとは?
さすがに熱性けいれんは聞いたことある方が多いでしょうし、日本人で8%ほどとも言われてるのでお子さんが診断されている方も少なくないでしょう。生後6か月~5歳くらいまでに、発熱にともなって起こるけいれんで、典型的には左右対称性の全身けいれんで、数分で消失し、脳も含めて後遺症などは残さずに、生涯で1-2回で終わる良性の疾患です。中には、左右非対称や長時間続いたり、連発したりするものがあり、複雑型と呼んだりしますが、脳炎脳症やてんかんなどの疾患が隠れていることがあります。
発熱したときにけいれんしたら熱性けいれんか?
ということですが、熱性けいれんは発熱したときにけいれんするけど、発熱時のけいれんがすべて熱性けいれんではありません。上記の熱性けいれんの典型例に当てはまれば、救急車で救急外来に行っても、熱性けいれんと診断され何もせずに帰されます。
典型的なけいれんでないなら(年齢なども含め)、まず別の要因のけいれんを考えないといけません。「てんかん」という病名は怖い印象があるかもしれませんが、短い発作なら緊急性はないので、けいれんが止まっていれば一旦帰宅して大丈夫です。髄膜炎、脳炎脳症、脳腫瘍、脳梗塞、脳出血といったものの症状(サイン)であれば、緊急性があり見逃しは許されません。人の一生が左右されます。
ガクガクしてなければ、けいれんじゃないよ
よく救急受診したら熱性けいれんと言われたっていう患者さんが来るんですけど、その発作時動画を見せてもらうと、顔色悪くしてだらーっと脱力してるだけの発作の方がいます。これガクガクしてないのでけいれんではありません、でも熱性けいれんの非典型例(複雑型)のこともあります。けいれんじゃないけどけいれんってややこしいですね。この日本語病名が悪いんです。海外では熱性けいれんのことはFebrile seizureといって直訳すると熱性発作といいます。昔はFebrile convulsion(直訳で熱性けいれん)とも呼んでましたが、これだとけいれんしてない発作型を含められなくなるので、言わなくなりました。でも日本では熱性けいれんという単語が浸透しまくっていて、本当は熱性発作と呼びたいところだけど、変に訂正すると余計に混乱するのでそう呼ぶ人あまりいません。
けいれんしてないからといって軽いわけではない
そして、もしけいれんしてない熱性けいれん(もうややこしいですね)だったら、けいれんしてない分、軽症なのかというと全然違って、むしろ全身で派手に左右差無くけいれんしてる方が典型的な症状などで安心できます。このけいれんしてない意識障害のみの発作(非けいれん性発作)は、警戒すべき発作の一つとして注意して見て行かないといけません。
正しく評価するには、百聞は一見にしかずで
けいれんのようは発作性のエピソードは、目撃者の言葉だけの表現では、なかなか正確に把握できないことが多いです。でも、診断には非常に重要なので、出来る限り発作は動画記録するようにしてください、これが最も確実です。発作の途中からでも構いません、かけ布団などあれば剥がして、少し引き気味に全身映るように撮ってもらうとよくわかります。
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