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百日咳が爆発的に増加しているようです

こんにちは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。

 

百日咳の流行が止まらないようです。全国的にも過去最多報告数を更新し続けています。図はわかりやすかったので東京都のものを提示していますが、赤線が今年、青線が昨年なので、爆発的な増加がわかりますね。すでに5人の赤ちゃんが亡くなってるらしいです。昨年の今頃も例年より増えているということで、当時のブログで当院で就学前と小6での三種混合接種を済ませている方は勝ち組だとか言ってました(旧院長ブログ該当記事)が、そういう発言することもはばかられる状況となっています(といいつつリンクを貼る)。

百日咳流行の何が一番問題なのか

百日咳は強い感染力で、成人であれば長期にわたる咳を、ワクチン未接種の乳幼児には重度の呼吸困難症状を、時に脳炎を合併し、死亡することもある感染症です。ウイルスではなく細菌なので効く抗菌薬はありますが、症状が強すぎて治療が追い付かないことも多いです。よって、ワクチンが最大の防御策で、現在では2か月から始まるデビューワクチンで接種する五種混合に含まれています。五種混合は2,3,4カ月と続けて3回接種しますが、この3回接種で免疫が定着するまでの生後すぐに感染すると、本当に死ぬことがあります。

どこから赤ちゃんは感染するのか

乳児期早期の赤ちゃんは、そうそう保育園など子どもがわんさかいるところに外出するのは多くないと思います。では、どこから感染するかというと、外で家族が感染して家庭内に持ち込んできます。小学校入学前のちょっと上の兄姉は大丈夫です、0-1歳にかけてワクチン接種完了済なのでほとんど罹患しません。問題はワクチン効果が落ちてきた小学生以上の家族です。ですから、当院では5年以上前から、就学前と小6頃に百日咳が含まれた3種混合ワクチンの自費接種を勧めてきたのです。

妊娠中に三種混合を接種するしかない

対策としてはもちろん家族がワクチン接種して菌を持ち込まないというのはありますが、海外では以前から妊娠中の母体に三種混合ワクチンを接種する方法が取られています。そうすることで胎児にも免疫が形成されるので、生まれてすぐから百日咳から守ることが出来ます。ちゃんというと、国内の三種混合ワクチンは成人に接種すると接種部の腫れなどの局所副反応が出やすいので、海外の妊娠中に接種するものは副反応が出にくく改良したものが使われますが、我が国内には無い製品です。しかし、全身性の重篤な副反応はないので、現状国内で妊婦に使用されてるのは子どもたちと同様のワクチンです。赤ちゃんの感染と重症化リスクを考えたときに、接種部の腫れくらいで躊躇している場合ではないということですね。

最後に言いたいこと

お気付きかの方もおられるかと思いますが、これRSウイルス予防で妊娠中に接種するアブリスボ®とほとんど同じ話です。どちらも同様に出生直後の赤ちゃんを守るために重要なワクチンです。どちらも我々小児科医がずっと悩まされ、恐れてきた、赤ちゃんを殺す病原体に対抗する超絶強力な防御手段です。これを接種するかどうか迷うなんて考えられないです、迷ってる人は一度2~3年くらい小児科医になって市中の病院に勤務してみて欲しいと思うくらい。アブリスボにしても三種混合にしても、接種しない選択肢なんかあり得ないってなりますよ。実は三種混合は現在全国的に品薄ですが、妊娠中の方で希望されれば当院では出来る限り優先して接種しています。かかっている産院での接種が難しい妊婦さんは、お問い合わせください。