こんばんは。滋賀県栗東市の「栗東よしおか小児科」院長の吉岡誠一郎です。
当院の受診時の問診票には希望する検査や処置の選択欄があります。そこに「鼻吸引」の選択肢もあって、しばしばそれに〇して出される保護者さんがおられます。実際は希望していただいても、必要がなかったり逆効果になりえる状態が多くて半分以上お断りしています。それについて今回は書こうと思います。
鼻水吸引は状態によっては必要な処置
小さい子はまず上手く鼻がかめませんから、鼻腔やその奥に溜まった鼻汁を意図的に出すことが出来ません。そういう子が風邪をひくと、体がウイルスなどに対抗した結果発生して増えた鼻汁が鼻腔を塞いでしまい、息苦しくなってしまいます。息苦しい状態が続くと栄養も睡眠もとりづらくなるので風邪の治りも遅れるかもしれません。ですので、鼻腔内の鼻汁を除去してあげることは、そういった状態には必要な処置です。
鼻水の性状にもよる
では、どんな鼻水でもとにかく吸引して除去すれば良いのでしょうか?鼻腔の中でべっとりと粘稠度が高く、がっつり栓をしている鼻水なら、それを除去することの効果は大きいです。しかし、透明でさらさらした止めどなく流れ出てくる鼻水なら、吸引しても後から後から鼻汁が出てくるので、効果はあまりないと思われます。鼻吸引は小さい子どもにとっては少なからずつらい処置なので、効果が無いことはなるべくしたくありませんよね。
そもそも鼻水で鼻がつまっているのか
そして、そもそも鼻水で鼻がつまっているのかという問題もあります。大人でも鼻がつまっていて何度も鼻をかんでも通りが改善されず、ドラッグストアにもよく置いてある鼻閉を解消する点鼻薬を使うと、霧が晴れたようにすっきり鼻が通った経験はありませんか?あれは鼻腔内の粘膜の腫れを解消する薬なので、実は鼻閉は鼻汁の栓によるものだけではなく、粘膜の腫れが原因のことも多いというのがわかると思います。ですので、その状態で無理に吸引チューブを入れると鼻水はそれほど吸引されない上に、粘膜を刺激して余計に腫れて鼻づまりが悪化するかもしれません。
乳児期早期の赤ちゃんについてですが、よく鼻がつまっていると思い吸引をこまめにしようとされることがありかすが、実際吸引してもあまり引けなかったり、その鼻閉音も変わらないことが多いです。一つの理由はまだ体が小さくやわらかいため、気道自体とその周辺も同様に細くやわらかくて、へしゃげて狭くなりやすいというのがあります。そうすると、ちょっとした鼻汁(気道分泌物)やら姿勢やらの影響で、すごく鼻が詰まって苦しそうな呼吸音が聞こえることがあります。そういう時は、見た目もほど本人は苦しくないので、睡眠も哺乳も影響ありません。本当に鼻が詰まっていて苦しいのかどうか気になる時は体重増加を確認されると良いです、問題なく体重が増えていれば少なくとも哺乳が影響されるほどの鼻閉ではないということです。
自宅での鼻水吸引はどのようにするか
今はご家庭で吸引器を購入される方も多いです。安価な保護者の口で吸う吸引器も売られていますが、保護者が感染をもらうリスクもありお勧めできません。多少お金がかかりますが、長年使用できますから電動のものを購入される方が良いです。当院ではメルシーポットをお勧めしています(⇒購入サイト)。自宅で吸引する際には、あまり深くまで入れ過ぎないように注意してください。盲目的に深くまで吸引口を差し込むと粘膜を傷つけたり、鼓膜を痛めることがあります。小児科では、看護師さんも鼻腔内の構造をよく理解しいるから慎重に多少深いところまで入れます。ですが、ご家庭でやるときは控えめに、子どもの鼻の中を除いて見える範囲くらいを軽く吸引するのが良いと思います。
鼻水吸引のまとめ
鼻水吸引自体は効果的な治療の一つですが、それ自体は子どもはすごく嫌がりストレスになることが多いので、慎重に適応を考えて、効果的でかつ安全に行っていただければと思います。
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